院長コラム

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2018.09.01更新

皆さんご存知の通り、当医院では開業以来一貫して「噛み合わせ」を重視した診療を行っています。

 

噛み合わせが悪い人は顎関節症になりやすいと言われますが、必ずしも噛み合わせが全てではないことも最近分かってきています。噛み合わせが問題なくても、日中の過度の食いしばりや舌の押し付けなどの習癖、あるいは頬杖や足組みなど態癖と呼ばれる事なども顎関節症と間接的にリンクしている事も分かってきたからです。

 

前歯と奥歯

顎の動きの中での前歯と奥歯 

 

 

しかし以下の3つの症状で、どれか一つでも当てはまる方は、もしかしたら前歯と奥歯の連携がうまく取れていない可能性があります。我々の業界用語でいうところの「干渉がある噛み合わせ」ということになります。

 

1.     朝起きた時に、顎が疲れた感じがする。あるいはどこか特定の歯が浮いた感じがする。

2.     食事の後に顎が疲れやすかったり痛くなることがある。

3.     起きた姿勢でどこにも力を入れないで上下そっと閉じたときに最初に前歯が当たり過ぎる。

 

 

人は物を噛んで食事をする際、最初に下の顎をほんの少し前に出してガブリときて、その後奥歯でモグモグとした後に、ゴクリと飲み込む…この繰り返しです。

 

食べる時には下の顎を少しだけ無意識に前に出して(約1-1.5㎜位)噛み付きますのでこの時に初めて前歯が当たり始めます。また、当たっていないと噛み切れないのです。しかし筋肉位と言って、無意識にすっと噛んだ時に、既に前歯が先に当たってしまっている噛み合わせでは前歯の当たり過ぎなのです。この前後の遊びの部分を、下顎安静位と呼んでいます。

 

起きた状態で上下の歯を噛み合わせた状態で下顎をほんの少しだけ前にスライドさせた時に初めて前歯の裏側が当たり始めるのが正しい噛み合わせです。

 

一方、側方に動かした時、例えば顎を上下歯を合わせた状態で右にずるずると動かした時には最初に犬歯が当たっていなくてはなりません。これは以前のブログで「犬歯の重要性」の回でもお話ししています。

 

つまり前歯と奥歯の連携と役割がそれぞれにあるのです。

 

顎を中心としたこの咀嚼サイクルはピストン運動のような結構力強い反復運動です。咀嚼サイクルの中では、前歯と犬歯は噛み切ったりする以外の時にはいちいち接触させて食べてはいません。そこの位置に犬歯がある、前歯があるという事を既に無意識に脳が理解しているために、早い咀嚼運動の中でも邪魔にならずに前歯と犬歯が存在できており、なおかつ、その存在自体が咀嚼サイクルを制御しているということになるのです。

 

前歯と奥歯2

 

 前歯の役割、奥歯の役割が顎関節と影響

 

 

細かい咀嚼サイクルの中に、うまく前歯と奥歯の連携が取れた位置にご自分の歯が並んでいてくれないと、その歯は噛むたびに他の歯より必ず疲労し始めます。つまり「調和」でなく干渉しているのです。

 

噛むたびに、食いしばるたびに、少しばかりの干渉が持続的に続くと、その歯が疲労してぐらぐらになったり、細かいキズができてそこから虫歯や歯周病になったり、 場合によっては、顎の方が痛くなったりもするわけです。

 

歯列矯正というと、よく出っ歯だから治したい、受け口を治したいとか、乱杭歯を治したい、とかといった見た目的なところに目が行きがちですが、 実は基本的には前歯と奥歯の連携を整えて、その人に合わせた咀嚼サイクルの中に、干渉の起きない歯を並べる作業のことなのです。

 

前歯と奥歯3

 個々の人の顎の解剖学的形態は歯の角度とリンクしている  2009年 武井、佐藤らの研究による
 臼歯に向けて歯の咬合面角度がフラットになっていくことから順次誘導咬合と呼ばれている

 

 

また虫歯や歯周病で特定の歯がダメになってしまった場合、基本的にはその痛い歯やダメになった歯を治療するのは当然でしょうが、本当は全体のそういった前歯と奥歯の連携を再確認して、干渉が無いかという所まで噛み合わせを考えて総合的に治療することがとても重要ではあります。

 


そうした治療計画の場合、結局はまず矯正治療が必要となるケースが沢山あるのも事実です。現実的には治療費用や期間などの壁で皆さんが矯正治療をお受けになれる訳ではないところも課題とも言えます。補綴的矯正と言って、歯を削り倒してかぶせ物で形を整えていく方法もありますが、基本的には歯そのものにかなりの侵襲を加えることになるのであまりお勧めできる方法ではないです。

 

機能的なモノは美しい…とよく工業デザインの世界では言われてきましたが、人の噛み合わせについてもそれは全く同じと言えましょう。

 

当医院で行っている歯列矯正や大掛かりな義歯を製作する際、予め【顎機能精密検査】がまず必要となるのはそのためです。

 

顎機能精密検査によって、その方の顎の解剖学的な上下の関係と角度、更には動かした時の機能的な運動状態、そして干渉の有無等を多角的に判断してその方の咀嚼サイクルには本来どのように歯が並んでいると安定して機能していけるのか、といったことが分かります。

 

医科の分野で大きなオペをする際は、必ずと言っていいほど色々な検査をして、初めて方針を立てて手術をするのに、何故歯科の分野ではかぶせ物や最終義歯の種類の説明ばかりに目が向いてしまうのか?また見た目の部分だけを整えようとする傾向があるのか?残念ながらそうした噛み合わせによる干渉の原因などから話をしていては、本質的に治すという事が、とても長い作業となってしまい、治療費用や期間から患者さんの側で無理だと諦められてしまうからだと思います。

 

皆さんはご自身で、どこまで介入してほしいのか、どうしたいのかをしっかりと担当の先生とお話しされてから治療に進んでいくべきでしょう。これから先の人生の中で、どうすれば安定した状態を長期間維持できるかを一緒に考えていける先生を見つけて頂きたいです。

 

投稿者: アクアデンタルクリニック