院長コラム

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2020.06.12更新

通常、噛み合う歯の咬合面の溝に出来てしまった虫歯を治す場合、本当に小さい範囲であれば、そこだけ削り 、コンポジットレジンという白い樹脂をその場で詰めて治す方法がよく用いられています。この方法の利点は何と言っても、その場で即日に治せてしまう上に、見た目も歯と同じく白く、しかも健康保険が利くので、結構患者さんには喜ばれます。

 

ところが、虫歯の大きさがある程度大きくなってきた場合、その部分を綺麗に詰めるのには限界が出てきます。特に隣接面と言って隣の歯との接触点にまで虫歯が及んでいる場合は、削った歯の型を取って、模型を作り、そこを補うためのかぶせ物を作り、再度お口の中の歯にセメントで着けて噛めるようにします。

 

大きさによって、小さいほうから順にインレー → アンレー → クラウンと呼び名がそれぞれ違います。

 

 

図1 インレー装着前の削られた歯の模型

 

インレー

 

 

図2 自費のセラミックのインレー(青線部は自分の歯とかぶせ物のつなぎ目)

 

セラミックインレー

 

つなぎ目

 

図3 クラウン装着前の削られた歯の形模型

 

クラウン

 

 

図4 自費のジルコニアのクラウン

 

ジルコニアクラウン

 

クラウンタイプの補綴物(図4)は噛む面全てを覆っているために、自分の歯とかぶせ物とのつなぎ目が、向かい合っている歯の噛み込む場所には存在しません。 従って、強く歯ぎしりなどをした際に、そこの隙間から欠けてしまう危険性は少ないのです。

 

一方インレータイプのかぶせ物(図2)の場合には上下の歯がこすれあうたびに自分の歯とかぶせ物とのつなぎ目に物が当たり続けるために、その部分が欠けてしまうことが起きやすくなります。そしてそこから虫歯になったり最悪のケースでは自分の歯が破折してしまうこともあります。特に、ハイブリッドタイプのインレーなどでは、その素材の強度不足と重なって、図5赤線のように欠けてしまう危険性が多々あります。

 

図5 破損したハイブリッドインレー

 

ハイブリッドインレー

 
 適切なかぶせ物の素材と形態はその方その方の噛み合わせのパターンや骨格の違いに合わせて決められるものです。小さな虫歯だと思っていたのにずいぶん削られてしまった…という話が出てきますが、上下の歯の通り道になる部分が残された自分の歯とかぶせ物のつなぎ目位置に来るような場合やがっちりとモノを噛む骨格タイプの方には、しっかりと削り込んでむしろクラウンタイプのように完全に覆ってしまうほうが、欠けたりしないので安全だからです。

 

歯ぎしりや硬いものを噛んだりした時には実際何十キロという普段考えている以上の負担がこの咬合面には集中するのです。

 

もちろん、何でもかんでも歯をいっぱい削ってクラウンタイプにした方が良いと言ってるわけではありません。

 

良く噛む側の歯なのか? 噛む力の強い方なのか? 噛み合わせのパターンが緊密な方なのか? 前歯にしっかりとした被蓋があり、犬歯誘導がちゃんとある噛み合わせのコントロールが出来ている方なのか?

 

向かいあっている噛み合わせとなる歯が天然歯なのか? 軟らかい素材を用いたかぶせ物なのか? はたまた硬い素材を用いたかぶせ物なのか? あるいは取り外しのできる義歯なのか?

 

等々…様々な事案を検討して設計を決めていくのです。

 

「削り過ぎない歯医者が良い歯医者だ…」と言われることがあります。確かにMI(ミニマルインターベンション)と言われるように、大切な歯はあまり削りたくはありません。しかし予後や長期的な耐久性なども考慮してそれに耐えられるように敢えて大きく虫歯を削っている、時にはマキシマムインターベンションも必要なんだということをご理解頂きたいと思います。

投稿者: アクアデンタルクリニック