院長コラム

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2018.07.30更新

主訴のうち特に多いのが“歯が全体的にしみて仕方がないので何とかして欲しい”と言っていらっしゃる方です。虫歯の場合には表面的に黒く穴が開いていたりして一目で分かるのですが、一見何でもない歯がしみて仕方がないので何とかして欲しいと来られるわけです。病名としては業界用語で知覚過と呼んでいますが、実は非常に大きな問題点を抱えているのです!
 
原因は「歯ブラシを強く当て過ぎるからです」…と昔は言われてきましたがどうやらそれだけではないことが最近の研究で明らかになってきました。

 

歯は本来、上下の噛み合う面(咬合面)が点と点で接触して噛み合っていますが、この部分が磨り減ってくると面同士の接触になり歯1本1本への負担は相当なものになっていきます。それに加えて、奥歯などでは横からの異常な咬合力が加わることで、歯の付け根あたりにマイクロクラックと呼ばれる微小欠損が生じてそこから歯牙の擦り減りの原因が始まるというわけです。

 

WSD

 

 

顎がダイナミックに動く際、糸切り歯とよばれる犬歯は横からの力をしっかりと受け止められるように全ての歯牙の中で一番根の長さが長く出来ている歯なのですが、この歯がしっかりとガイドしてくれる場所に並んでいなかったり (2017.11.28院長コラム「犬歯の役割と重要性について」参照) 、擦り減り過ぎてきた場合に奥歯への知覚過敏が更に進行していくことも考えられるわけです。

 

つまり、テレビのCMのように対症療法的にしみる部分に薬やイオンのバリヤーを作っても根本的には原因に対処したことにはなっていないわけです。

 

ではどうしたら知覚過敏が治せるのでしょうか?

 

【噛みあわせを注意深く診査して、磨り減っているガイドとなる糸切り歯までを含めた前歯の状態の改善や面接触になってしまっている臼歯部の咬合面の新たな負担のかからない形態再生と言うことになります

 

場合によっては簡単な付け足しで済んでしまうこともありますし、場合によっては全体的に手直しをしなくてはならない場合まで様々です。

歯がしみるのは実は歯の噛み合わせが原因だったとはご自身で気づかれている方はそう多くはいらっしゃらないのではないでしょうか?また長年歯医者さんに通っていても強く当てないためのブラッシング指導やただしみている部分の治療だけで済まされてしまってませんでしたか?

投稿者: アクアデンタルクリニック

2018.07.23更新

「奥歯が噛むと痛いので診て欲しい」という主訴で来院された患者さんがいました。右の下の奥から2番目の歯には銀歯の被せ物がしてありました。その歯は以前虫歯の治療で神経が取られている歯で、神経を取った後に健康保険の銀歯を被せて治療が終了していた歯です。

レントゲンを撮ったところ、写真のような状態でした。

 

破折

  

レントゲン上では白い部分は一番密度の濃い部分を意味します。

ですので、当然銀歯は白く写っています。また、神経をとった後にその空洞の部分を埋める樹脂(ガッタパーチャといいます)も2本前方と後方に白く見えているのがお分かり頂けるでしょう。

手前の根っこの近心部分(向かって右側の根っこ)に黒い影が下まで広がっているのが観察されます(黄色で囲った部分)。歯の根の周りは通常歯槽骨でおおわれていますが、ヒビなどが起きた場合にそこから炎症が起こり、組織に変化が起き始めます。その結果、本来硬い状態だったところが肉芽組織などの柔らかい部分が登場してきます。

つまりこの歯はどうやら前の根っこの一部にヒビが入ってしまったということなのです。本来神経を取った歯に強化するために埋め込まれるべき土台も入っておらず、こうなってしまうと基本的には予後が悪く通常は抜歯となりますが、残されたもう一本の後ろ側の根っこの方は問題ないので半分だけ切断して抜歯することにしました。

 

破折2

 

ところが銀歯を外したところ残す予定だった歯の後ろの部分にも破折が広がっており(水色線)、総合的に検討した結果、残念ながらまるまる抜歯となりました。(赤線は近心根破折による歯肉の腫れ)

写真は抜かれた半分の根っこですが、やはり縦に根の先の方に向かってヒビが入っているのが確認されています。  

 

破折3

 

見た目で何でもないように見えても、実は根っこの中では色々な事が起きていることが多いのが現状です。

通常、噛むと痛いといった症状が歯にある場合神経の治療をして神経をとりますが、その後も何となく噛むと痛いといった症状が続いて症状が取れない場合などは、このヒビがどこかに入ってしまっている場合がかなりの率で存在するだろうと言われています。

 

噛むと痛い歯の場合、基本的な理由は次のどれかであることが多いようです。

① 噛み合わせが強く当たっている(咬合性外傷)
②  根のどこかにヒビがある(歯根破折)
③  歯周病で歯の周りの歯槽骨が減っていて歯の動揺がひどい(歯周病)

④ 根の先に炎症がある(根尖病巣)

 

臨床経験上①が原因で②または③と派生することが特に多いと感じます。

 

現代人は多くのストレスを夜間に、歯ぎしりなどをいろいろなパターンで繰り返しているといわれています。そのときに歯にかかってくる力は数十キロ以上になるといわれています。

 

そんな過酷な状況下で、ついに耐え兼ねてこのように歯が割れてしまうことは結構あります。

 

ですから、こういった夜間ブラキシズムに対してもスムーズに力を発散できるような無理のない自然な噛み合わせが唯一の予防処置になるものと考えています。

前回コラム「インプラントを入れる前に考えよう」でも書きましたが、この抜歯した部分にただインプラントを植えても上記で述べた噛み合わせの治療が施されてない場合インプラント部分にも遅かれ早かれ支障が出てくることと思います。

 

そのためには、本院長コラムでずっと言い続けている、「小臼歯抜歯をしない矯正治療」を含めた「全体のバランスを考えた治療」をすることが、10年後20年後の長いスパンで考えた時に結局ご自分の歯を守ることになると私は考えます。

 

 

 

 

投稿者: アクアデンタルクリニック

2018.07.06更新

インプラントを入れる前に…

 

先日、ある患者さんがインプラントを左下の奥歯(下顎第一大臼歯、第二大臼歯)に入れたいとの希望で来院されました。実際に当医院にインプラント相談でいらっしゃる患者さんでも一番多いのがこの写真のようなケースです。

 

欠損

 

確かにこの部位の顎骨の状態は問題はないようでした(下写真赤丸部分)。インプラントを今すぐにでも入れて欲しいとの事でしたが、他の部分も診察したところ反対側の右下の奥歯の噛み合わせが低く咬合支持もしっかりしておらず(下写真緑線部分)、前歯部はしっかりとした顎の動きをガイドしてくれる状ではありませんでした。つまり意識下でも無意識下でも奥歯に負担がかかる状態でした。

 

欠損2

 

患者さんとしてみれば今は痛くなく何でもない部分を治療する必要はないと思うかもしれませんが、実は既に喪失してしまった奥歯の喪失原因も実はそういった不調和な咬合のバランスが引き起こしていたからだという事が分かってきました。

 

要するに、欠損部分だけ見てインプラントに高い費用をかけても全体のバランスが調和していないとそう遠くない将来またその部分のトラブルに見舞われる可能性が高いと言うことです。またそこの部分に問題が起きなくても(そういう場合そこのインプラント部分には負担がかからないように噛み合わせを甘くしているケースが多い)、反対側に問題が生じることも結構あります。しかし患者さんとしては費用がかかった部分は問題が起きてないため、まさか噛み合わせのバランスの不調和が原因だとは思わずに今度はそちらの部分もインプラントをと、どんどん悪いスパイラルに嵌ってしまうようです。

 

そのようにして考えていくと、矯正治療を含めた全体的な治療をインプラントに取りかかる前にしなくてはならない人がかなりの数いることになりますが、現実的には治療費用の関係や見た目などから矯正治療から始められる方が半分以下なのは残念なことです。インプラント治療をされる方は特にこの点を気をつけていただき、長期的に予後の安定した状態を保てるようにして頂きたいものです。

投稿者: アクアデンタルクリニック