院長コラム

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2019.09.02更新

「親知らずは抜いた方がよいのか、抜かない(残した)方がよいのか?」

 

我々歯科医師の間でも意見が大きく分かれるテーマの1つです。また患者さんの間でも先生によって意見が違うので「本当のところはどうなの?」と、知りたいことの上位に必ず上がってくるテーマです。

 

以下、一般臨床に加えて噛み合わせと矯正をメインにやってきた私なりの見解をお伝えしたいと思います。

 

今回は『抜かない(残した)ほうがよい親知らず』篇です。

 

①親知らずが歯並びに悪影響を与えずにちゃんと機能している場合

 

智歯

 

私の臨床経験上、例え親知らずが生えきっていたとしても、上下の親知らず同士で噛み合っていたとしても(特に現代人の顎は小さい関係上、臨床上少ないですが…)、その代償として前歯(特に下顎)の並びが凸凹してしまったり、噛み合わせが奥歯しか当たっていなかったりして、特に矯正を含めて全体的な治療が必要となった場合は先ずは親知らずを抜歯することからスタートすることが多いです。

  

しかし、この写真の場合は

 

智歯2

 

このように上には親知らずが無く、下の親知らず8番が対合側の第二大臼歯7番としっかり噛んでいるため抜かない(残した)ほうがよい親知らずになります。

 

 

親知らず 干渉

 

しかしこの写真のように下には親知らずがちゃんと生えていますが、向かいの上には無い場合、下の親知らずは徐々に上に向かって延出しててきます。そうすると噛んだり、顎を動かしたりするときにこの延び出た親知らずと上の7番に干渉が生じてしまい、最悪の場合顎関節症を引き起こすことがあるため抜歯するほうが望ましいという訳です。

 

親知らず干渉2

 

 

 

親知らず 干渉3

 

 この写真の場合は、上には親知らずが有りますが下には有りません。確かに下の7番と干渉はしませんが、この親知らずは下に向かって延出↓してくるため、いずれ顎を閉じただけでも下の歯茎を噛んでしまいます。そうなると痛み止めは役に立たず、最悪の場合、機械的刺激により歯肉癌に発展してしまうことも十分に考えられます。従って抜歯した方が賢明です。

 

親不知干渉4

 

②抜いた後のリスクが明らかに大きい場合

 

智歯3

 

下顎には下顎管という下顎の知覚を司る神経が走行しています。横を向いて埋まっている親知らずと下顎管が非常に近接していて無理に抜くことによってその下顎管を損傷してしまう可能性が高い場合、つまり抜いた後のリスクの方が大きいと判断した場合は抜歯しない選択をします。

 

下顎管

 

この写真の場合は、埋まっている親知らず(埋伏智歯)が下顎管(緑線)と非常に近接していて、しかも親知らずの位置と方向から考えて(CTで確認することもあります)、特に全体に大きな影響を及ぼさないであろうと判断し、抜歯はしないことになりました。

 

ちなみに、埋伏智歯で抜歯する必要がある場合は、抜歯後の下顎管へのリスクを説明して抜歯するか否かの選択をして頂き、抜歯される場合は大学病院の口腔外科を紹介しますので安心して施術を受けて下さい。

 

③将来親知らずを7番として代用可能な場合

 

代用

 

写真のように親知らずの手前の7番が神経の無い歯で将来的に長持ちしないだろうと診断出来た場合、あえて7番を抜歯して、8番が自然に抜いた7番の位置に来るのを待つか、矯正治療を併用して7番の位置に誘導するという選択もあります。

 

代用2

 

 ちなみこの場合、下顎の親知らずは明らかに7番に悪影響を与えており、下顎管にそれほど近接していないため、親知らずを口腔外科専門医に抜歯依頼することになります。

 

 

投稿者: アクアデンタルクリニック