院長コラム

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2019.03.02更新

当クリニックを初めて受診される患者さんには必ず問診票を書いて頂くのですが、その中で結構な割合で『口臭が気になる』にチェックを付けられる方が多いです。

 

また当クリニックのように歯科医師会に所属している医院で行う区の無料の成人歯科検診・妊産婦検診の問診票でも、やはり多くの方が『口臭が気になる』にマルを付けられます。

 

他人の口臭はとても気になるものですが、ご自分の口臭も気にされている方が案外多いようです。あなたはどうですか?

 

リステリンやモンダミンなどのマウスウォッシュやスプレー、口臭予防ガム等色々と方法があるようですが、実は口臭と一番関係があるのはあなた自身の唾液なのです!

 

つまり、一番効果的な口臭対策とは

 

 「口の中に絶えず唾液を巡回させる」

 

ことなのです。

 

実は、お口の中は唾液が絶えず出ていて、新鮮な口腔内の環境を整えるのにとても大きな働きをしているのです。

 

唾液には、、歯垢(プラーク)の酸を中和しようとする働き(抗酸化作用)や、細菌の増殖を抑える働き(抗菌作用)のある成分が沢山含まれているのです。

 

だから、緊張したり、内服薬を使用していたり、あるいは加齢で唾液の量が減少してきたりすると、それだけ口臭は強くなってくるという訳なのです。

 

【お口の中にいかに多く唾液を巡回させて、澱んでない状態を作る事が出来ているか】がポイントになります。たまに舌をぐるぐると廻してお口全体に唾液が停滞させないようにしましょう。

 

そして次に大切なのは、

 

デンタルフロスを最低毎晩寝る前に1回でもいいから通してやることで歯間の澱んだ部分に酸素を行き渡らせ、口臭の原因となる嫌気性細菌(空気を好まない細菌)の絶対量を減らすことです。

 

その際にWAX付きのデンタルフロスを使うと滑りが良く、抵抗無く歯間に入っていくので、初心者はまずはWAX付きを購入することをおススメします。

 

フロス

 

とは言っても、溜まり過ぎている汚れの場合は、そもそも最初はいわゆる『ドブさらい』が必要ですので、一回はレベルの高いクリーニングをしっかりとお受けになり、上述したことを日々実践し続けるだけであなたの口臭はかなり無くすことが出来ます。

投稿者: アクアデンタルクリニック

2019.01.30更新

あなたの街に歯科医院は何軒ありますか?

 

今やコンビニの数より多いと言われている歯科医院。それは紛れもない事実です。当医院が所在している東急東横線祐天寺駅半径1キロ内にもコンビニ6軒に対して歯科医院はなんと18軒もありますabon

 

それでは一体どの歯科医院を選んだら良いのでしょうか??

 

知り合いの歯科医院や友人などに紹介された歯科医院に行くのも一つの選択肢でしょう。もちろん腕が良いのは大前提ですが(笑)ehe

 

それ以外に歯科医院を選ぶポイントを2つお教えします。

 

 

 

① 多様な治療の選択肢を持っている歯科医院であること

 

皆さんはご自分の歯が痛くなって歯科治療を受けることになった場合、治療方法は一通りではなく、色々な条件によって決定されることをご存知でしょうか?これから歯科にかかる方はを是非この事を知っておいて頂きたいのです。

 

最近、他医院から当医院に転医院される患者さんの多くが「もうインプラントでしか治療出来ません!」とか「真ん中の歯を抜かないと矯正出来ません!」と言われたということが増えています。un

 

 

例えば、奥から2番目の歯が痛くなった場合で歯がすごく崩壊して到底使えそうもない位のむし歯であったとします。この場合、それでもこの歯を残した方が良いのか?抜歯した方が言いのか??という最初の選択をします。

 

かなりのご高齢であり、内科的な疾患を多く抱えており、服用薬も多い方で外科的な処置が厳しい場合には、根っこの一部を残した状態でもそこを消毒して、だましだましお使い頂くことがあります。

 

一方若い健康体の方の場合にはとっとと抜歯して、その部分を早く仕切り直すことでしっかりとした次の治療(例えばインプラント)をし易くするという治療をします。つまり年齢やその方の健康状態がまず第一の条件になります

 


次に、残念ながら抜歯となった場合、その次に来る選択肢は4つあります。

 

1つ目は両隣の歯を削って固定式のブリッジというかぶせ物にする方法、

2つ目は歯のない部分にインプラントという人工歯根を外科的に埋入する方法、

3つ目は両隣の歯にワイヤーなどでひっかける取り外し式の義歯にする方法、

そして、

4つ目は何もしないで放置する(あまりおススメしませんが)方法です。

 

比較

 

皆さん過去にこのような図を見せられて説明を受けられた経験があると思います。しかしそれぞれの費用ややり方、利点・欠点の説明ぐらいではないでしょうか?実はそれでは不十分なのです!何故なら…

 

それぞれの治療方法には様々な要因が影響するからです。

 

例えば、外科的な方法が嫌!…という方はブリッジか義歯ということになります。その中で両隣の健康な歯を削るのは嫌!…という方の場合は、必然的に取り外し式の義歯となります。

 

義歯という選択をされた場合でも、次の選択肢として、健康保険のワイヤーを使った義歯にするのか?、特殊な樹脂を使った金属を使わない外見的に目立たない自費の義歯にするのか??を選ぶ必要があります。

 

ブリッジという選択肢を選んだ方の場合には、健康保険の効く金銀パラジウムという金属を使った銀歯のブリッジにするのか?、最近の3D技術を応用して作られたジルコニアという白い硬い結晶体を削り出して作られる自費のブリッジにするのか??を選んで頂く必要があります。

 

インプラントを希望される方でも、ヘビースモーカーの方はNGですし(余談ですが、ヘビースモーカーの方にそのリスクや本当は禁忌症であることを説明せずにインプラントを行うモラルのない歯科医師が最近多いように思います。)、骨粗鬆症のお薬を長い間服薬されてきた方や管理されていない糖尿病の方もNGです。かみ合わせや他の部分の歯の健康状態があまり良くなく、高度な歯周疾患になっている場合はまずそちらがしっかりとコントロールされていないと、いくらインプラントオペが成功したとしても、いずれダメになってしまいます。

 

このように様々な要因が影響してくるため、例えば「とにかく健康保険の利く範囲で先生の一番良いと思う方法でやってください」ということになると、どうしてもちゃんとした治療が出来ない場合があるためにこちらも面食らってしまうこともあります。この方が既に説明したように何でもない自分の歯を削られるのは嫌!…なのであれば最初にハッキリと伝えておかないと、黙って保険の銀歯のブリッジが被せられて終わり…ということになりかねません。健康保険は使うことの出来る材料も保険適用のものしか認められておりませんので、本来それ以外のもっと良い素材があったとしても、そちらを使うことが出来ない訳です。

 

歯科治療は上に書いてきたように様々な方法論があるのですが、そこには其々の利点欠点が必ずあります。インプラントはかなり優れた良い方法だと私も思っていますが、高額な保険の効かない治療ですので保険の範囲でとにかくお願いしますという方には初めから治療の選択肢から除外されることになります。

 

一方、インプラント推進派の先生方がよく引き合いに出すブリッジに対する不利な側面として、ブリッジの耐久性は両側の歯を削って支えるので7年くらいしかもたない…ということを挙げられます。しかしながら私が開業以来手掛けたブリッジの多くが15年以上今まで問題無く保っています。

 

要するに口腔ケアの状態がしっかりしていて、かみ合わせのコントロールがしっかりした設計であれば、基本的にはブリッジでも決してすぐにはダメにならないのです。

 

義歯の場合は周りの歯をあまり削ったりせずに済みますが、歯肉の部分にプラスチックの樹脂を利用していますので、長期的には樹脂が少しずつ唾液を吸って変色劣化していきますので何十年と同じものをお使いになるのは難しいと思いますし、そもそもそうなるとニオイなどの点で不衛生かも知れません。

 

ある意味消耗品と割り切って、何年かごとに乗り換えていくことが必要となるでしょう。また、歯や骨などの硬い組織以外に粘膜面にも力を分散して支えていく必要上、どうしても食事中に義歯が動いたり、粘膜面の圧迫感、すれなどの違和感がある程度生じる可能性があるのは事実です。

 

ブリッジと義歯の、良い所取りとしての中間的な存在として、取り外しのきくテレスコープ義歯というドイツ式の特殊な設計の治療方法もあります。(これについては2018年6月2日の院長コラムをご参照ください)

 

ここまでお読み頂いてやっぱり歯科治療は信頼出来る担当の先生としっかりと話をしてから進めなくてはいけないんだな…と思われた方、それがまず第一歩と思って下さい。そのために、保険、自費にこだわらずにその方その方に合わせた方法論を一緒に考えていってくれるような、あなただけのかかりつけの歯科の先生を早いうちから探しておかれることを強くお勧めします。

 

 

② 歯科医師会に所属している歯科医院であること

 

これは実は患者さんのほとんどが知らないと言っても良いでしょう。ここで法律的な話をします。

 

 歯科医師法 第一章 総則

 第一条 歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌(つかさど)ることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。       

 

それでは公衆衛生とはどういうことでしょうか?

 

 公衆衛生(public health)

  地域社会、国など社会一般の人々の健康を保持、増進させるため、公私の機関によって行われる組織的な衛生活動をいう。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説) 

 

 組織的な社会の努力により、大衆の保健衛生、福祉の向上・増進を行おうとする科学と技術の総称(広辞苑  三省堂の解説)

 

公私の機関によって行われる組織的な衛生活動…ということは要するにそれぞれの歯科医院が仮に公私の機関の一部と解釈は出来たとしても、組織的な衛生活動をしているわけではない(自分の診療所の中だけで個人的に衛生活動はしているものの)ということになるのです。

 

要するに、ただ勝手に開業しているだけでは組織的ではありえず、組織的であるためには歯科医師会という組織化された団体の中でしか行動出来ないのが公衆衛生なのです。

 

 

ですから、弁護士会のように開業したら必ず歯科医師会に所属するのが当然な筈ですが、何故か未入会診療所が存在するのが現状です。

 

「ちゃんと治療してくれさえすればいいよ。私たちにとって歯科医師会に入っている診療所かそうでないかなど関係ない」という患者さんもいることでしょう。

 

確かにそれも一理あります。しかし、35歳以上の方を対象とした『成人歯科検診』やお子様を対象とした『フッ素塗布』、妊産婦の女性を対象とした『妊産婦検診』などのお住まいの地域から送られてくる無料の検診、まさにあなただけなくあなたのご家族のかかりつけ歯科医によるサービスは歯科医師会に所属している歯科医院でしか受けられないのです。

 

また、例えば一軒家を構えるともちろん法律的な決まりはありませんが、その近所のゴミ当番をやるのが当然ですよね?ところがゴミ当番は拒否するがその収集場所にゴミはちゃっかり捨てる隣人が居たらあなたはその人とご近所付き合いしたいですか?ちなみに我々歯科医師会会員が選出した代議員が国会でその年の歯科医療費予算や保険点数を良いほうに向けて勝ち取ってきます。つまり歯科医師会非会員診療所はそういう良い所取りだけをしているのと同じなのです。punpun

 

また、診療内容や診療費に関して直接先生やスタッフに言いにくいことを相談出来たり等の大きなメリットもあるのです。

投稿者: アクアデンタルクリニック

2019.01.08更新

 以前のコラムにも載せた写真ですが、いずれも当医院に真面目に10年以上通って下さっている70歳以上の患者様のお口の中です。down arrow

 

70歳70歳2

 

細かい所を論じたらキリがありませんが、オーバー70歳でこの状態なら十分満足頂けると思います。nico

 

それでは逆にどうすれば70歳になってもこのような状態でいられるのでしょうか?

 

そもそも将来的に歯を失ってしまう原因は何でしょうか?

 

 

詳しく知りたい方は以下の文章をお読み下さい!!

 

        down arrowdown arrowdown arrowdown arrow

 

 

【将来歯を失う二大原因】

 

1.歯の汚れ、歯垢(プラーク)、歯石を放置している


前回の院長コラム「これが究極の歯ブラシだ!」でも書きましたが、皆さん肝心な場所を磨けているようで案外磨けていません。また、バイオフィルムという汚れはプラークのように目に見えないので気づかないことが多いのです。shun

 

しかしながら、これも前回の院長コラムで述べましたが、現在では日本においても徐々にお口の中の関心が欧米並みに高まっていて、ケアするための様々な歯ブラシや周辺器具が薬局で所狭しと並んでいます。スイス製のクラプロックスという超優れものの歯ブラシも手に入るようになり、誰でも特殊なテクニック要らずで肝心な場所を磨けるようになりました。ihi

 

もちろん、かかりつけの歯科医院で定期的なメンテナンスをしてもらうことが大前提ですが、放置したことによって歯を失ってしまう人はかなり少なくなっているのではないでしょうか?

 

 

2.歯並びと噛み合わせが悪いのを放置している

 

私の臨床経験上、これが一番の原因だと思います!


一見歯並びが悪くないように見えても、前歯と奥歯の連携が取れていない場合が多くあります。これに関しては2018年9月1日の院長コラム「あなたの前歯と奥歯の噛み合わせの連携は大丈夫?」を是非お読みください。

 

8020運動の達成者(80歳になっている時点で20本以上の歯が存在する方)は、ほとんどの方が噛み合わせに異常が無く(正常咬合)、受け口(反対咬合)や前歯が噛んでいない状態(開咬)が極めて少なく、前歯の被蓋が正常で、顎を前後左右に動かした時に奥歯が干渉しないスムーズな噛み合わせ(アンテリアガイダンス)が存在するものがほとんどであるという研究報告書が平成14年度に出されています。(平成14年度 8020達成者の咬合および顎顔面形態に関する調査 東京歯科大学歯科矯正学教室、千葉市歯科医師会共同による8020公募研究報告諸抄録資料より)

 

この報告書の意味するところは、年を取った時に歯が多く存在している方は若い時から噛み合わせが良好であったということなのです。

 

つまり、矯正治療を若い頃(もちろん年を取ってからも)に受けておくことのメリットは、出っ歯を治すとか、受け口、乱杭歯を治すといった、見た目を良くするといった審美的な要因以上に、ご自身の歯そのものの寿命を延ばすという、とても大切なことに繋がっているわけです。

 

歯並びが悪いのを放置しておいた結果、中年以降に歯が駄目になり始めて、ブリッジによる欠損補綴から始まり、違和感の強い取り外しの義歯を我慢して使わなくてはならなくなったり、更には歯一本あたり40万円もするインプラントを何本も入れる必要が生じてしまったり…という方を数多く見てきています。namida

 

そう考えると、確かに矯正治療は高額な出費ではありますが、長期的に見た場合、将来のご自身の歯の延命=健康のためには非常に安価で理に適った治療と言えるのではないでようか?ni

 

噛み難いといったような症状を特に奥歯は見えないからいいや…と考えて放置していると、将来とんでもないしっぺ返しを受けることになります。

投稿者: アクアデンタルクリニック

2018.12.19更新

今回の院長コラムは、実は皆さんから断トツにリクエストが多い「歯ブラシ」について書いてみます。tooth

 

「歯ブラシの話なんていまさら」「かかりつけの歯医者さんで十分に教わっているよ」という声もあるでしょうが、皆さん知っているようで意外と知らない「歯ブラシ」の極意について書きますのでしばしお付き合い下さい。toothtooth

 

 

「上手に磨けていませんね shun

 

皆さん、歯医者さんで先生や歯科衛生士さんからこんな一言を言われた事があるのではないでしょうか?un

 

「1日3回ちゃんと磨いているんだけど…」「デンタルフロスと歯間ブラシも欠かさず併用しているのに…」「高い電動歯ブラシを使っているのですが…」とか、皆さんそれなりに磨いているという自負があるにもかかわらず、

 

「上手に磨けていませんね shun

 

と、自分の努力が否定されたような一言を言われると、「じゃあ、一体どうすればいいんだよ??」という気持ちになるのも当然だと思います。

 

そこで…

 

以下のことを知って頂くだけで、あなたの歯磨きは確実に上達します!! gya

 

口腔ケアが非常に重要で、その良し悪しが老後のQOL(クオリティ オブ ライフ)に大きく係わってくるということは、多数のメディアが色々な研究データの紹介を基に報じているお蔭でようやく広まってきました。

 

それを受けて、歯ブラシメーカーからも色々な歯ブラシが研究開発され、形態や大きさなど色々工夫されたものが登場してきました。テレビのCMでも毎日のように歯ブラシの新製品を目にすることでしょう。薬局に行かれると多種多様な歯ブラシが置いてありどれを選んで良いか迷ってしまうほどです。

 

それでは一体どの歯ブラシを使えば良いというのでしょうか??? 

 

 

当医院ではスイス製のクラプロックス(CURAPROX)という歯ブラシを大推薦しています!!

 

クラプロックス

 

 

歯ブラシは昔から色々なタイプのものが発売されてきており、それなりに磨きやすく出来るようにしてくれるタイプの歯ブラシが数多く出されてきました。しかしそれにもかかわらず、

 

肝心のプラークと呼ばれる歯と歯茎の境い目にある細菌の塊を完全に取れている方が我々の診療室においても本当に少ない

 

のです。結果「上手に磨けていませんね shun」となって指摘されてしまうのです。

 

では、何故皆さんが毎日一生懸命に歯を磨いているにもかかわらず歯周病が慢性化していくのか?、そして、何故日本の国民が海外からのインバウンドの方々から頂いている評価の中でおもてなし感が高くて高評価な面がある反面、残念だと思っている点に「日本人には口臭のある方が多い」ということを取り上げられてしまっているのでしょうか?

 

そもそも歯磨きとは本当はどこを磨けばよいのか?を考える必要があります。

 

プラーク

 

 (図1) 歯頚部(歯と歯茎のキワ)に沿って白いプラークが帯状に付着している状態

 

 

(図1)の写真は奥歯の外側から見た写真で、歯頚部と呼ばれるところに注目して頂きたいのですが、白っぽく帯状にプラークと呼ばれる細菌の塊がゴッソリと付いているのが見えます。この方も実は「歯磨きはしています」しかも「電動歯ブラシも使っています」という方でした。そもそも歯磨きではここの残ってしまっている部分こそ取らなくてはいけないはずなのですが、それが実際は全く取れていなかったのです。

 

奥歯の内側や、下の前歯の裏側などにはこの状態のように慢性化している方がとても多くみられます。

 

 

プラーク2

 (図2) 一番汚れの溜まりやすい歯頚部

 

 

歯頚部と呼ばれる歯と歯茎の境い目の部分が一番汚れの溜まりやすい部分で、実はここの全周部分をいかに綺麗にしておけるかという事こそプラークコントロールの神髄なのです。「歯周病」と呼ばれる病気にならないためには、そもそも(図2)のように歯の周りに取り巻くプラーク(赤い点で描いてあります)をいかに毎日取り除いておけるかということに尽きます。

 

これに対して、一般の方は歯磨きをする際に、歯ブラシが(図3)のような当て方になっている方がほとんどのようです。

 

 

プラーク3

 (図3) 歯ブラシの毛先が歯のみにあたっている状態。

 

 

歯ブラシの毛先が歯茎のキワには当たっておらず歯のみに当たっているため、キワのプラークは依然として残ったままの状態です。ならば理論的には(図4)のようにブラシを当てればプラークの取り残しは生じないはずなのはご理解頂けるでしょうか。

 

 

プラーク4

 (図4) 理想的な当て方

 

 

分かり易くするために、一番下の方の歯ブラシの毛を赤くしてありますが、その部分が歯ブラシの一番端っこの毛先だけが歯肉溝に入り込んでいる状態で、しかも歯肉には当たっていない、歯茎のギリギリの所までだけにきっちりとブラシの毛を当てられているか、がポイントとなります。そしてこれが出来ている方が上手な歯磨きが出来ている方ということになります。

 

ただ(図4)の方法は技術的にとても難しいのです。何故かと言うと、通常の歯ブラシの毛先はある程度硬いうえに、植毛の数が少ないために歯茎に少しでも当たってしまうと痛いためについついそこから少し離したところで歯ブラシを当ててしまい、結果的にキワのプラークは残ったまま、という先にあげたような状態(図3)になります。無理して歯茎に毛先か乗っかった状態でゴシゴシとやられてしまいますと、今度は逆に歯茎が痛んで、擦過傷や歯肉退縮で知覚過敏を引き起こしてしまうという危険性もあるのです。(オーバーブラッシングと呼ばれています)

 

実は硬めの毛先の歯ブラシでピンポイントに上の(図4)のように磨ける方は、それをしっかりと理解されて実際にその様な部分にブラシの毛先を当ててコントロール出来ている方のみ有効で、ほとんどの方は今お使いの歯ブラシでそれをやろうとするのがなかなか難しいということになります。

 

この歯ブラシ技術は本当に難しいものですが、逆にこれが上手に出来る方であるならば、実はどんな歯ブラシをお使いになっても口腔ケアはしっかりと出来るというのが事実のようです。電動歯ブラシをお使いの方も、そのヘッドの毛先は同じように歯と歯茎のキワに当てられていなくては効果も半減ということになります。

 

ところが高価な電動歯ブラシを使っていれば大丈夫!と勘違いしておられる方が実は非常に多いのですehe

 

それではそんな歯茎のキワとかいった面倒なことなど考えなくてもいい、歯と歯茎両方に適当に当ててただゴシゴシとするだけ(図5)でしっかりとキワも自動的に磨ける歯ブラシがあればベストだろうな、ということになりませんか?

 

 

プラーク5

(図5) 歯と歯茎両方に適当にあてる歯磨き

 

 

この当て方で安全に出来る歯ブラシが登場したのです!

 

スイスのクラプロックス(CURAPROX)という歯ブラシです。

 

クラプロックスの歯ブラシは高密度植毛で極細であるファイバーで構成されているために、歯と歯茎の両方に毛先が当たっても全く痛みが無く、しかも効率よくキワのプラークが自動的に絡め取られます。

 

ヨーロッパの最新の考え方に基づき設計され、コンパクトヘッドにソフトな植毛をされており、通常の歯ブラシの毛の数は多くても800本くらいなのに対して、なんとこの歯ブラシは7倍もの5460本もの高密度設計となっています

当医院では最上位の7600本というタイプのものを採用・大推薦しています。

 


かなりしなやかで極細の特殊な毛先が高密度に植毛されているために手で触るとビロードのような感触で、歯茎に当たっても全然痛くなく、しかもマッサージ効果が適度に得られる硬さになっています。これにより歯と歯茎のマッサージが両方可能となり、歯磨きの際の歯ブラシの当て方を難しく考えないで、どなたでも上手にプラークコントロールが出来るものとなりました。

 

プラークコントロールの神髄は歯磨きというより、歯茎磨きという言い方の方が合っており、その歯茎磨きを体現できる歯ブラシなのです。

 

当医院では今までは基本的には「どんな歯ブラシを使えばいいのですか?」というご質問をされる方に対して特定のメーカーのこの歯ブラシが良いと言った指定はしていませんでしたが、現状お使いの歯ブラシでご自分がシッカリと磨いているつもりであるにもかかわらず「磨けていませんね…」と言われてしまう方に対してはクラプロックスの歯ブラシをまずおススメしております。

どなたが磨いても、とりあえずそこそこの合格点がつけられるプラーク除去がすぐにでも可能となるからです。アマゾン、東急ハンズでもクラプロックスまたはキュラプロックスとして入手可能なようですし、当医院でも販売しております。

 

そして購入した方の8割~9割が必ずリピーターとなってくれています!!

 

歯磨きとはその方の技術力に合わせてどこを狙って綺麗にすれば良いのかということを頭で理解しながら実践して頂くことであり、そのための歯ブラシというのはそれを達成するために自分に合ったものを選ばれるのが一番大切だということになります。

ですので電動歯ブラシだから安心とか、毎日磨いているから安心ということではなく、キワのプラークがどれだけ本当に取れているのか、毛先をキワに当てることが出来ているのかということだけを考えて各自工夫して磨いて頂くことこそが一番大切なのです。

 

    『磨いている』のと『磨けている』のでは全く違うのです!

投稿者: アクアデンタルクリニック

2018.11.13更新

完全に消えなくてもかなり軽減するケースを沢山経験してきました。

 

当然と言えば当然です。悪い噛み合わせや歯並びは口元の筋肉に緊張感を与え、結果しわを強調させます。お口に合っていない入れ歯や低い噛み合わせは筋肉を収縮させ深いしわを作ります。

 

また犬歯(糸切り歯)の真後ろにある第一小臼歯(4番)を抜歯して矯正治療した方でほうれい線にお悩みの方も実は結構いらっしゃいます

当然です。丁度口角の端付近に存在する第一小臼歯を抜歯してしまうのですからuo

 

第一小臼歯の存在の大切さは何度も何度もこの「院長コラム」の中で協調してきましたが、その機能面のみならず審美面においても大きく影響してきます。

 

上記が原因の場合、ヒアルロン酸を注入したとしても根本的な解決にはならないでしょう。

 

 

【例1】

 

この方は歯並びが悪く、また噛み合わせが右に曲がっているため、ほうれい線が気になって仕方ないと言っていました。

 

法令線

 

大谷

 

そこで矯正治療と噛み合わせの治療を行い歯並びを良くして曲がった噛み合わせを真っ直ぐにしたところ…

 

法令線2

 

大谷2

法令線はほぼ無くなりました!

 

 

【例2】

 

10年以上前に大学病院で犬歯(糸切り歯)の真後ろにある第一小臼歯(4番)を上下左右4本抜歯して、噛み合わせの低い金歯を入れられて以来体調不良や噛み合わせの違和感に悩まされてきた患者さんです。

 

 

しわ

 

ほうれい線のみならず下顎のしわに注目して下さい!

 

大川

 

再矯正と適正な高さのセラミックを入れました。

 

金歯2

 

大川2

 

ほうれい線が浅くなり、何と言っても下顎のしわがかなり改善されたのがお分かりになりますでしょうか?

 

 

以上、ほんの少しの例だけお見せしましたが、噛み合わせ、矯正治療によって享受出来るメリットは沢山なのです!!

 

筋肉は…いや

「噛み合わせ・矯正治療は裏切らない!」

投稿者: アクアデンタルクリニック

2018.11.07更新

虫歯や歯槽膿漏が酷くなってしまい、歯の神経を取る事になることは良くあります。神経を取られた歯のことを失活歯(しっかつし)と呼び、生きている生活歯(せいかつし)と比べた場合、次のような問題があります。

 

1.     生活歯に比べて強度が下がる(木に例えるならば失活歯は枯れ木のようなもの)

2.     失活歯は経年変化で黒ずんでくる

3.     感覚が生活歯より鈍くなっている

 

問題点の1.と2.に対応するために、基本的には失活歯に対しては、その次に行う処置は補強するために土台を作って、その後にクラウンと呼ばれるかぶせ物でカバーして対応します。

つまり、生活歯の治療の場合、悪い所を削り取った後は、そこをコンポジットレジンと言う樹脂で埋めるか、そこの部分の型を採ってかぶせ物をして治療が終了するのに対して、失活歯の場合にはまず土台で補強する作業が先に必要となってきます。

 

また、失活歯の場合には歯質の強度が減少しているために、欠けやすい状態となってきますので、同じくらいの大きさの虫歯でも、余分に削られることがかなり多いのが現状です。

 

ご自身の大切な歯質は出来る限り残したいと考えるあまり、奥歯などの何十キロという噛み合わせの力が大きくかかる場所において一部分のみの(インレータイプと呼ぶ噛むところの場所の内側部分にはめ込むような形の詰め物)処置をしてあったために、処置後少し経過して使っている間に、そこから歯に亀裂が入って、半分に割れて、結局は抜歯となってしまうような危険があります。

 

かぶせ物の種類には色々な素材がありますが、健康保険の場合には基本的に奥歯は全て銀歯で、前歯も銀歯に使うのと同じ金属にプラスチックが張り付けてあるものと最初から決められてしまっています。ですので、どうしても口をあけた時に銀色の金属部分が見えてしまう場合が少なくありません。その他銀歯の弊害については過去の「院長コラム」をご参照ください。

 

歯科の素材は日進月歩で新素材が登場してきているために、生きている歯と全く分からないように失活歯を修復することも可能となってきました。

 

その最先端の素材がジルコニアセラミックであり、審美性と強度両方を兼ね備えた最高の素材となります。

投稿者: アクアデンタルクリニック

2018.10.10更新

皆さんの歯は毎日の食事をする際や就寝時や無意識下での歯ぎしりや食い縛りの際に強い力で酷使させられ、汚れや口腔細菌に日々晒されています。そんな中で本当に身体に無理が無く長期的に安定するかぶせ物は何でしょうか?

 

折角治したところからまたダメになってきてやり変える必要が生じてしまうというリスクはどうしたら避けることが出来るのでしょうか??

 

今まで皆さんはこれからずっと使うかぶせ物について、単純に健康保険の銀歯にするか?そうでない自費の高い白い歯にするか?という説明しかされて来なかったのではないでしょうか?

 

と言うのも、そもそもどうやったら長持ちするのか?どうなったら歯がダメになるのか?ということを“教えていない”医療機関が結構多いからなのです。

 


 今まで他医院に通われれてた患者さんによくよく話を聞くと、手際よく虫歯治療をして治してくれることだけに忙しくて、どうやったら治した歯が長持ちするのか?という方法論にまでは全く時間を割かずに、保険と自費の値段の違い位についてしか説明してくれず、単純に高いか安いかという判断だけしかされなかった方が結構多いことに驚きますgan

 

とっとと安上がりにダメになったところだけを早く治して欲しいということだけを求めてこられる方にとっては、うちの診療所は向いていないと言わなければなりません。

 

「どうやったらまた同じところがダメにならないように出来るのか?」 「別のところがダメにならないようにするにはどういったことをすればよいのか?」知って頂きお伝えすることが何より重要なのです!

 

皆さんには、人生の貴重な限られた時間を割いて、折角通院して頂くわけですから、無駄な時間を取られないようにする方法をまず知っていただきたいのです

 

自分の歯がダメになり、知らないうちに別の場所もダメになり治療を必要とする事態を望む方は誰もいないでしょう。他の診療所で、歯磨きをよくしてくださいということを伝えられただけで、具体的にどういった行動をあなたがとればよいのかということまで伝えられてきたでしょうか?

 

長期的に口腔内を安定させ、治療のための無駄な通院時間の節約が出来る具体的な方法は次の2つです。

 

① かぶせ物の素材は健康保険の銀歯などの金属の場合ですと、金属イオンの影響でプラークが付きやすく (➜部)、プラークの溜まった場所から酸化腐食が始まり、やがて黒くなり、2次う蝕で (←部) 何年か後に再治療のリスクがかなり高まるので、金属でない素材でしかも表面にプラークが付きにくいジルコニアセラミックのほうが良いのは当然です。また、酸化腐食すると金属アレルギーの影響が出やすくなり口腔内電位が高まり、身体に悪影響を及ぼします。

 

 

プラーク

 

じるこにあ

 ジルコニアセラミック

 

 

② かぶせ物をどうしても金属にする場合には、せめて予防処置を徹底させ、かつ定期的なクリーニングとメンテナンスにお金をかけるという習慣化が重要だということです。

投稿者: アクアデンタルクリニック

2018.09.12更新

質問です!

 

70歳を過ぎた時に皆さんは下の写真のどちらのお口の状態で居たいですか

 

藤門鬼川

 

実は、この写真のお二人とも72歳の同じ歳の方です。

 

真面目にこのコラムを読んでいる皆さんなら当然上の写真の状態で居たいですよね??

 

それでは…

 

皆さん歯科治療を受ける時に今までどのような受け方をされてきましたか

 

もしかしたらこれから書くようなよくありがちな治療を受けてこられませんでしたか??

 

そして当然と思い何も疑問を感じなかったということはありませんか???」 

 

もしこれから書くような治療をされてきていて、それに対して何も疑問を感じていないなら、70歳になった時に上の写真の方のようなお口の中で居られるのはまずは不可能だと断言できます!

それどころか70歳、いやもっと早い50歳とか60歳の段階で下の入れ歯のようなお口の中になってしまわれるかもしれません!!

 

 

【悪循環な歯科治療の例】

 

Nさんは、会社の定期健診で数本虫歯があり歯石が溜まっていると指摘されたので、直ぐに会社の近所の歯科医院に行って診てもらいました。

 

案の定、虫歯と歯周病ということで、歯石除去と虫歯を削って治療してもらい、その部分には健康保険の部分的な銀歯とプラスティックの歯が入れられて、2回で治療は終了しました。

 

数年後にまた… 会社の検診で今度は別の場所が虫歯になったことを指摘されました。 Nさんは再び会社近所の歯科医院に治療に行き、歯石除去をした後に別の銀歯とプラスティックの歯が口の中に増えて、治療は終了しました。その時は前に診てもらった先生は退職していて別の先生に治療してもらいました

 

そんな治療の繰り返しが何年かおきに何回か続いた結果、気がついた頃には、ほとんど奥歯は銀歯とプラスティックだらけの状態となっていました。まるでお口の中が金属の墓場ganみたいです。そしてプラスティックの歯は変色して黄ばんだ状態です。

 

金属の墓場

 

 

 

Nさんにとっては、ほとんどの歯は既に治療されているから、そこはもう虫歯にはならないだろう、もうこれで当分は平気だろう…と思っていたわけです。

 

ところが… 今度は数カ月してから、以前に治した銀歯のキワの部分が黒っぽくなっていてしみるようになったのです。

 

それに加えて、以前より歯ブラシを当てると血が出やすいので、再度会社の近所の歯科医院に行くことにしました。すると、今度は治したはずの銀歯と歯のつなぎ目から虫歯が進んでいて、銀歯の下の方にはかなり大きな虫歯が広がってしまっている、と歯医者さんから説明されたのです。実際に治療用の探針がひっかる状態でした。ちなみに担当してくれたのはまた違う歯医者さんでした

 

Nさんは通院する度に毎回担当してくれる歯医者さんが違っていました。先生が大勢勤務している会社の近くの大きな歯科医院に通っていましたが、たまに治療中の仮の詰め物が取れた時に予約無しで駆け込んだりした時には「本日は担当医が不在のため日を改めてお越しください」と言われて数日我慢しなければならないのが不便でしたが、会社から近くて便利なため特に他の医院に変えようとは思いませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

仕方なく麻酔の注射を受け、一度治した銀歯を削って外した後、黒くなってしまった部分と虫歯で悪くなった所を更に深く取り除かれました。今度は神経まで虫歯が達していたので、神経を取る治療までしました。これですっかりしみなくなって良かった、ということでしたが、今度は最初よりも大きなクラウンと言う歯全部をかぶせてしまう銀歯が入って、治療はいったん終了しました。

 

その後は痛くなることは無く過ごせていたのですが、また何年かして、今度は治した銀歯が自然に取れてきたのです。銀歯が取れる少し前あたりから、歯磨きをするとやはり血が少し出て、そこには物がやけに挟まりやすい…といった症状はありました。

 

しかも何となく口臭も強くなってきた感じがしました。それでも今回は痛くないのできっと簡単に付け直してもらえばすぐに終わるだろう…と気楽に歯医者さんに行ったところ、「虫歯が沢山進んでいるのでこの銀歯はもう使えません」と言われました。


神経を取って銀歯をかぶせた歯でも虫歯は進むのだ、痛くなくても虫歯はどんどん進んでいくのだ、ということをNさんはこの時初めて知ったのです。さらに厄介なことに神経の無い歯は以前のように虫歯が進んでも決して痛くなってこないため、事の重大さに気づくのが遅れて、結果的に相当大きな虫歯になってしまっていたのです。

 

歯は象牙質とエナメル質という硬い組織で出来ていますが、虫歯になると、おが屑(くず)のように柔らかくなってしまい、虫歯菌で感染された歯質の部分はそのままにしておくとどんどん進行して柔らかくなっていくのです。

結果的に虫歯にやられてしまった悪い所を全て削り取られると、ほとんど自分の歯が残っていないすり鉢状の切り株の状態となり、歯の本体自体どころか、根っこの部分はほとんどない薄い状態となってしまったのです。こうなると、土台を立てて大きな歯を支えるだけのものは無理です。


「もうやり直しはできないので保存不可能ですね、抜歯です。」と言われ抜歯しか選択出来ない状態unでした。

 

抜歯

 

 

 

Nさんは今まで虫歯になったら、いつも真面目に歯科を受診して、その都度しっかりと治しているつもりでした。それなのに、何年かごとにダメになっていくのは仕方がないものなのかな?、、、と思いながらも、何故そうなるのだろうか?と少し疑問を持ち始めていました…

 

【これまでのお話の問題点とは?】


皆さんはこのストーリーをお読み頂き、Nさんのこれまでのどこに問題があると思われたでしょうか?

 

また、もしかしたら皆さん自身も経験されてきませんでしたか


虫歯が出来たからと言ってNさんはそれを放置していたわけではありませんし、診療を真面目に受け、言われたままに治療され、その後終了となっています。Nさんに責任は何一つ無いように思えますよね?


 Nさんは当医院に実際にいらしている方で、基本的にとても真面目な方です。こういったNさんのような患者さんは当医院以外でもとても多く、我々の毎日の仕事は、ほぼそうしたことの繰り返しをしているといった状況ではないでしょうか?このような方があまりに多くいらっしゃるので、今後はこういった方々がどうすれば再治療のない長期的に安定した方向へ持って行けるか?といった事をお伝えしたく今回こうしてここに紹介させて頂いているわけです。

 

多くの真面目な患者さんが、例えそれが自分の為とはいえ、治療のために何度も足を運んでくださっているにもかかわらず、何故一定期間後に再度同じような治療を再び受け続けなくてはならないのでしょうか?

 

実は、Nさんの治療のストーリーにはつの大きな問題点があったのです。

 

これからお伝えするそのつの問題点を他人事と考えず、是非今後ご自分がどのような行動をとればよいのかということの参考にして頂きたいのです。そうすることにより、一般的によくありがちなNさんのような結末にはならないとお約束出来ます。

 

 

問題点1

初めての治療の時に、虫歯がどうして起きたのか?という理由と、今後そうならないための対策法について教えてもらっただけで、今なってしまっている虫歯の所だけを治してしまえばそれでもう治療は終了してしまってその後は何もしなかった点というにあります。

 

虫歯や歯周病になった理由を聞いたとしても、しっかりと毎日の生活の中でどうすればそうならないのか?という具体的な方法を実行に移していなかったという事が決定的に問題のあった点となります。

 

 虫歯は虫歯菌で起こる細菌感染症です。歯槽膿漏は歯周病菌によって引き起こされる細菌感染症です。」

 

Nさんは口の中にこの悪玉細菌に感染している状態で口の中の組織の抵抗力が弱くなり、虫歯や歯周病が発症してしまったのです。細菌の棲家となっているプラーク(歯垢)は歯磨きだけでは60%しか取り切れていないので、虫歯や歯周病を進行させないためには歯科医院で定期的なクリーニングを受けて頂くことがとても大切です。

 


基本的に細菌の量をコントロールすべく、しっかりとした口腔ケアをすれば防げます。また、だらだら食いなどの乱れた食生活があると簡単に虫歯になってしまいます。歯並びが悪くて磨き方が上手くないといった人など自分で虫歯リスクが他の人よりも高いと思う場合には、何でもなくても定期的な口腔ケアクリーニングなどの予防処置で歯科を受診することで、虫歯の予防や歯周病の予防にもなります。

予防メンテナンスクリーニングは、健康保険では出来ないのですが、そうした知識を知らない方にとっては、痛くもないのにあえてお金をかけて自費でクリーニングする意義がお分かり頂けていないという残念な状況が日本にはまだあるようです。そもそも今までの歯科診療所ではそういったアナウンスをしているところはほとんどなかったと思います。歯科医院は悪くなったら治す場所ではありますが、悪くならないために行う予防処置を行うところでもあるので、そのような考え方にマインドを変えていただけるとNさんのようにはならないのです。

 

問題点2

初めて治す場所に、健康保険治療で使われる銀歯やプラスティック以外に、プラークを寄せつけない安定した生体親和性の高い別の素材を選択する余地は無かったのか?という点が挙げられます。

 

健康保険では、大臼歯の虫歯治療の場合、虫歯が大きくなると基本的には金属の銀歯しか認められていません。(小さな部分はコンポジットレジンという白いプラスチックの詰め物で治されます。)

 


銀歯は実は金属イオンの影響で、口腔内のプラークを引き寄せやす(下の写真 ↑ 、特に隣り合った歯とのそのつなぎ目は慢性的に汚れやすい状態になります。そのまま磨き残しが歯と歯の間にある銀歯の部分から、酸化腐食して黒くなり、2次う蝕と言って虫歯が再度そこから出来る事がとても多い素材(下の写真 ↓ なのです。

 

ginnba

 

コンポジットレジンは小さい範囲の虫歯であれば、麻酔も不要な場合が多く、当初は歯と同じそっくりな色で出来るので、患者さんに大変喜ばれるのですが、数か月経過すると、プラスティックの性質上表面が粗造となるため汚れが着色し、噛み合わせの面に使った場合擦り減って噛み合わせのバランスが狂ってしまうのです。当然、歯とプラスティックの隙間も大きくなり2次う蝕となりやすいのです。

 

実は毎日の私どもの治療の半分以上は残念ながらこうした“2次う蝕”になってししまった方の治療の時間に割かれているという実態があります。

 


それでは、もしご自分の口腔内の状態が人よりも常に清潔に保てている自信がないのであれば、最初からそうしたリスクにさらされにくい素材、例えばセラミックやジルコニアなどの歯と同じ色の素材を、少々高くても選ぶべきではなかったのではないでしょうか?

また、保険が利かないから、高いからという理由で、最初から情報を与えられていなかった可能性もあります。基本的に健康保険の素材は、学力で言うところの義務教育レベルです。


穴が開いた場所を埋めてとりあえず噛めるようにするという、最低限度のところまでしかカバーされていないのが健康保険レベルのものなのです。義務教育レベルの上には高校や大学があるように、歯科で治す素材も、優れた素材が健康保険の銀歯以外にもたくさんあるので、それを希望される方はそちらに進むわけです。

 


歯科治療も、そのことの本質を理解されて、既に昔の治療で入れてしまった銀歯を後日外されて生体親和性があり、金属アレルギーの心配のないセラミックやジルコニアといったプラークのつきにくい白い素材に置き換えていかれる方が最近特に増えてきました

 

ジルコニア

 

ちなみに銀歯は歯科医師ならば絶対に自分や身内には使いません!

 

歯科最先進国であるドイツ・スイス・オーストリアや歯科先進国であるアメリカやフランスでは、患者さんのお口の中に銀歯や針金の入れ歯を入れることはしませんし、歯科大学でそのような教育をしていません。

 

ドイツでは患者さんのお口の中に無断で銀歯を入れた歯科医師は禁固刑になるくらいです。

 

問題点3

 

Nさんは通院するたびに毎回担当医が違うということでしたが、ここで誰かがNさんのお口の中の状態を見て、上記した問題点1と2をしっかり説明して、Nさんに今後どうするか?を選択してもらうべきだったのではないでしょうか?

 

そこはやはり同じ担当医ならばNさんの治療ストーリーを把握しているのでどこかでこの悪いスパイラルから戻してくれたのでは?と思いませんか?

 

 

いかがでしたか?

 

これまでのような真面目で治療主体型の患者さんはダメで、先を見据えた戦略型の患者さんでなくてはならない理由がお分かりいただけたでしょうか?

 

病気になってから初めて病院で提示されるままの診療を黙って受け入れてこられた従来型ではダメで、自分からどうすれば今後うまく維持していけるのかを考えながら診療所を使い倒すような患者さんこそ本当に長期的に安定した状態を維持していけるということなのです。

 

人の寿命が延びた結果、健康寿命をいかにして長くするか?、、、といった議論がよくされています。実は、口腔内を入れ歯ではなくしっかりとしたご自分の歯で老後過ごされている方のQOLは、そうでない方に比べて計り知れないものがあります。

 

老後は食事や人との旅行が唯一の楽しみでしょう。そんな時でも、いちいち硬いから食べられないなどと言って食べられるものを気にしながら食べるのはとても残念であるし、またそういった気兼ねがあると人と一緒に外へ出なくなってしまい、どんどん老けこんでいくでしょう。

 

そもそも歯を失わないための口腔ケアの習慣化、そして予防としての定期的なクリーニング、更には治すのならなるべく2次う蝕になりにくい良質な素材で治すという基本的な考え方は、結局老後になっても歯を失わずに過ごせるための一番最初の登竜門であることがご理解できた方からそれを実行に移されていかれているようです。

歯をよく磨きましょう…そんなことは聞き飽きました。


問題はどうしたら口腔内の細菌量を減らすことが出来る方法なのかを考え、そして治すのなら最初からやり替えのリスクの少しでも少ない良質な素材で、ということになるわけです。

 

私が平成14年に開業してから既に17年以上経過しています。その後、診療室の登録患者数は現在までに2千人を超えました。

 

そしてそこから分かった事実は、Nさんのような全て健康保険任せの治療習慣から脱却されていかれた方の多くが、結局は安定した状態をその後も享受し続けられているという事なのです。

 


私どもは長年の経験と実績からどうすれば長期的に安定した状態で口腔内を保つことが出来るかという答えを持っています。

 

極端な話、お金があればインプラント治療を受けることが出来るので入れ歯にはならないでしょう。セラミックで白くて綺麗な歯を入れることも出来ます。しかし親から授かった天然の白い歯や自分の根っこがある歯は二度とお金で買うことは出来ません。

 


 かなり条件の悪い状況からでも私どもの提案を信じて実行された結果、大勢の方が毎日の安定した口腔内状態を現在も続けることが出来ています。

 

70代になってもご自分の健康な歯で口元が若々しければ老人には見えません。そんな口元に対して最大限の注意を払っていただける方に対して、私どもの診療所では様々な対処方法をご提案させて頂いております。

 

このお話に加え、更に銀歯とジルコニアについて詳しく記した冊子を用意してありますので、来院時に是非ご覧下さい。

 

 

 

 

投稿者: アクアデンタルクリニック

2018.08.27更新

今回は私が当医院で「口腔がん検査」を導入するきっかけとなったとても貴重な体験をご紹介いたします。

 

私の大切な愛犬「コマ」(トイプードル)に起こった奇跡についてです。

 

コマ

 

 

昨年の2017年12月13日、愛犬のトイプードル「コマ」が歯肉の悪性腫瘍(扁平上皮癌・口腔がん)で余命3カ月と細胞組織検査の結果を受けて宣告されました。獣医さんからは、「悪性の歯肉癌はタチが悪く、抗がん剤治療や放射線治療をしても、どんどん腫れて来て、出血も多く、痛み、食べられなくなるので、見ていて可哀相になります。

 

ただ…癌の箇所が上顎の前歯の歯肉辺りなので転移が少ないため、手術で癌を取り除けば、少しは延命が可能かも知れないです。とは言っても、鼻と上顎が無くなるので、見た目と食事にハンディを背負うことになります。最悪の場合安楽死も選択肢に入れておいて下さい。来年の桜を一緒に見られるかどうか…(言葉を振り絞って)見られたらいいですね。」

 

病理

 

との事でした。私も歯科医師ですし、一医療人なので歯肉癌の怖さは十分分かっています。そして、抗がん剤治療や放射線治療がどんどん身体を弱らせて行くことも。癌細胞だけでなく、正常な細胞をも殺してしまうので当たり前です。しかも嗅覚という犬にとって大切な働きを担う鼻を取ってしまうことに抵抗がありました。

 

他に何か良い方法は無いものか?色々調べた結果「自然の森製薬」shizenno-mori.comさんという、犬の腫瘍専用フードを製造・販売している会社がありました。そのフードを購入した際に同封されていたパンフレットに「紅豆杉(こうとうすぎ)」という漢方の抗がん剤の記事に目が釘付けになりました。人間の抗ガン、抗炎症ケアの漢方薬として日本全国の医療機関・大学で研究され、がん細胞のみ攻撃するため副作用が無く、良い成績をあげているとのこと。この漢方を犬用に特別に販売しているというではありませんか!『直感的にこれしかない!』と思い、腫瘍専用フードに混ぜて与えることにしました。

 

紅豆杉

          

 

漢方薬なのでもちろん即効性は有りませんし、時には漢方の味が嫌なせいか?食べない時もあり苦労しましたが、そうこうしているうちに余命だったはずの3カ月が過ぎ、半年過ぎたあたりから、異常に元気になり、がんの箇所の腫れが小さく、赤みが薄くなって来た気がしたのです。

 

そして8月になって、な、何と信じられないことに『癌がほぼ無くなっている』のです!!!

更には、体重も1キロ増えました。悪性腫瘍では有りえないですよね。特に食べ物が関わる口腔内の癌なのに。

 

写真を撮りましたので、是非ご覧下さい。赤く腫れあがった状態から、すっかり赤みも消え、腫れも引いてしまいました。漢方は効き目が出るまで最低半年はかかるものと分かっていましたから、諦めずに根気強く続けて本当に良かったです。今でも引き続き量を減らしながら与えています。

 

赤く腫れあがった状態(2017年12月)  コマ がん 

 

悪性

 

赤みが消え、腫れも引いた状態(2018年8月)

こま がん2

 

           

 

 

 

コマはペットホテルの前で置き去りにされた保護犬で、私も孤独だった大変な時期に縁有って迎え入れた大切な愛犬です。3年前の2014年12月13日に迎え入れ、その日を誕生日にした同じ12月13日に口腔癌と宣告されたのは何と皮肉な事かと思いました。が、そんな子がここまで元気なった姿に私自身が勇気づけられました。今は紅豆杉をご紹介いただいた自然の森製薬さんに感謝の気持ちで一杯です。

 

ちなみに、コマが日に日に良くなって来たのを見て、自分の癌治療で抗がん剤を止めて、紅豆杉を飲み始めた医師である父も「信じられない」と言い、紅豆杉を飲む量を増やしました(笑)。そして抗がん剤治療をしている時よりはるかに元気な毎日を過ごしています。

 

この出来事を通じて確信したのは、【がんの早期発見】の大切さです。歯科医師である私はコマの歯を毎日磨いていました。彼は1年間保護施設に居たのですが、少なくともその間口腔ケアはロクにしてもらえず、歯はボロボロの状態でした。ある日上の前歯が急にグラグラし始めて歯肉が腫れ始めたのです。そこですぐにかかりつけの動物病院に行き抜歯と同時に組織検査をしたのです。ですから口内炎がいつまでも治らないとか些細なことでも早期に検査することが一命を取りとめることになるならば!との熱い気持ちから、当医院では「口腔がん検査」を導入することにしたのです。

 

また従来なら「口腔がん検査」は大学病院などの大きな医療施設でしか行っていませんでしたが、そうなると皆さんご存知の通り通院時間や距離などの問題で行くのが億劫になってしまうでしょうから、かかりつけの医院で手軽に出来ないものか?ということから当医院で導入することにしたのです。

 

*  紅豆杉に関するパンフレットは当医院でご用意がありますので、御関心がございましたらご一報下さい。

 

【追記】

 

先日、動物病院で秋の健康診断を受けました。採決結果で信じられない奇跡に遭遇しました!gya

普通ならガンしかもそれが悪性なら高い数値を示すはずの炎症反応が、な、なんと!標準値以下でした!gangan

 

炎症

 

これには獣医さんもびっくりしてました。しかもがん発生時の体重が5.3㎏ right arrow なんと7.0㎏に増えてました。

悪性がんなら信じられないことですよね?

 

 

       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者: アクアデンタルクリニック

2018.08.05更新

真面目に歯医者に通って治しても治しても、また何か月か何年かして同じ場所がダメになってくる経験をされたことありませんか?


せっかく治したのに、また同じところがダメになってしまった…何故なんだろう?と疑問を持たれたことありませんか??
今までに多くの研究者が様々な実験結果から報告していることを総合すると歯がダメになる大きな理由には大きく分けて3つあります。

 

1.   糖尿病などの全身疾患に罹っている場合

2.  口腔内を清潔に保っていない場合

3.  特定の歯だけに力がかかるようなバランスの悪い噛み合わせの場合


歯科医師になって以来色々な治療を経験してきて23年経ちますが、この3つ以外に当てはまるものは今のところ経験していません。

 

1.の「糖尿病などの全身疾患に罹っている場合」は残念ながら歯周病の進行を出来るだけ遅くするためのケアしか現在のところ出来ません。しかし不幸にしてもし歯が多く失われてしまった場合インプラントという選択肢は除かれ、ドイツ式テレスコープ義歯を調整・修理しながら使って頂くのが最善と思います。

 

確かに 2.の口腔内を清潔に保っていない場合」も一つの理由として考えられますが、いつも同じ場所だけが磨き方が悪いからだけなんてことがあるでしょうか?本当にそうであるならば、その特定の場所を念入りに磨くよう心掛ける必要があり、そのためにはメンテナンスのクリーニングを定期的に通ってもらうのも一つの方法でしょう。

 

ところが…

もし歯磨きの習慣としての口腔ケアはしっかりと出来ているにもかかわらず、何度もその場所がダメになったり、他の部分もダメになってくるのであれば、それはおそらく噛み合わせの全体のバランスが良くない状態のままであり、症状が出た場所の治療しか出来ていないことから、噛み合わせるたびに起こる「力の干渉」が結果的に蓄積してダメになった可能性が大きいと言えます。つまり3.の「 特定の歯だけに力がかかるようなバランスの悪い噛み合わせの場合」であり、臨床経験上8割に当てはまっています。

 

現行の健康保険では、そこだけ治療(痛い、取れた、虫歯になった、腫れた、その部分だけの治療)をするのが一般的です。健康保険制度では対症療法しか認められていないからです。これからもこれは変わらないし変えることは出来ないと思います。
こういった「そこだけ」治療では、そもそもそうなってしまった歯をだめにする原因となる、先にあげた3つの大きな要因のどれもクリアーしておらず、あくまで対症療法にしかなっていなかったという点に治療としての限界があります。

 

例えば歯並びを治す矯正治療の場合には、そもそも歯並びが成長発育の過程でなぜそのように悪くなってしまったのかを色々な資料を取って分析して治療する事が出来るために、悪くなってしまった原因からの根本治療が可能となります。

 

また、元々歯並びは良くて噛み合わせに問題がなくても、口腔ケア習慣が出来ていないと、例えば虫歯を削って奥歯に部分的な銀歯を被せて治ったかと思いきや、口腔ケアが悪いせいでしばらくしてからまたそのつなぎ目部分が停滞したプラークのせいで腐食して黒くなり2次カリエス(虫歯)となります。⇒そして今度ダメになった時には以前よりもっと削られて神経を取られた後、全体的に銀歯を被せて治療が一旦終わります。☞そうなると、再び磨けていない部分から再度銀歯が虫歯になっても、今度は神経が無いせいで銀歯が崩れ落ちてくるまで虫歯が進んでしまっても痛くないので結果的にかなりの歯質が崩壊していまっていることがとても多くなります。銀歯が撮れてきただけなので、ご本人は気楽にまた着けるだけで済むと思いきや、残っているご自分の歯の根っこの部分は既にほとんどが虫歯が進んで崩壊してしまって、結局抜歯せざるを得ないことが多いのです。
そして義歯やインプラントなどのさらに大掛かりな治療が始まる…といった歯を失っていく悪循環の連鎖から一生断ち切ることができないことになります

 

元々「口腔ケア」は出来ていて、しかも「嚙み合わせ」にも問題ない人が、事故などの突発的な理由で歯を失ってしまい、そこにインプラント治療をして治した人と、それとは別に2.3.の2つの歯を失う原因のどちらかの理由で歯を失った後にその原因を解決せずにその部分にインプラント治療をした人とでは、例え同じ部位への治療であったとしても、長期的には予後の差は歴然としていると思われます。前者の場合には根本的に歯をダメにする要因が最初から無かったのに対して、後者の場合にはその要因がクリアされていないまま、ダメになったところだけを見てその部分だけ何とかしようと治療したからです。

 

歯並びをよくする矯正治療は、決して見た目だけをよくする治療ではないのです。機能的にも対応できる口腔内環境を作ってやることで、歯や歯周組織、顎関節への負担を減らせる結果、それらの器官が長期的に守られるということになります。

また、予防としての口腔ケアプログラムとは、清潔な口腔ケアを保つための習慣化を本人に認識してもらうだけでなく、取り残されているバイオフィルムという細菌の被膜を、歯科医師やよく訓練された歯科衛生士さんの手で機械的に綺麗にしてもらう処置のことです。病名がつかないので、日本においては健康保険にそういた項目が無いのが現状な点が残念な所です。また矯正治療も、唇顎口蓋裂などの先天的な病気以外は、基本的には健康保険では治療できません。

 

(図1)総合治療

一つの例として症例(図1)をご紹介しましょう。


この方は、初診時、噛み合わせが見た目にも明らかに良くないのは分かりますが、その状態によって奥歯の咬合干渉が強く、しみてしょうがない歯があったために、当院へ来院される以前に、しみるという原因で歯の神経を取られて被せ物が奥歯に多数入っていた状態で来院された方でした。ご自身では歯磨きを良くしており口腔ケアにもずいぶん気を使っているのにどうして何度も歯を削る治療が必要なのか?本質的な原因を調べて欲しいという理由で総合治療を希望された方でした。

総合治療は、先にあげた3つの原因のどれがこの方の原因かを調べるとことから始まります。この方の口腔ケアや清掃状態には基本的に問題はありませんし歯周病でもありませんでしたので、3つ目の噛み合わせの状態の診断をしました。

咬合状態を知るためには、様々な方法で顎機能精密検査をします。骨格の上下のバランスや咬合する面の角度などを実際の模型やレントゲン写真から測るなど、かなり多角的に調べ上げます。そしてどうしてその不正咬合が成長発育の段階で起きたのかということまで考えたうえで、その不正咬合の要因を取り除くような方法で矯正治療を行います。次に必要に応じて以前の歪みのある状態のまま被せられていた機能的でないかぶせ物などの修正を含めた補綴治療を最後に施して安定した状態を作り上げました。

 

総合治療終了後(図2)総合治療2

結果的に、見た目は当然良くなりましたが、何よりも大切なことは、噛むたびに発生する咬合力が上下の歯にバランスよく伝わることが出来るようになったことから、各歯牙にかかる力が分散されて嚙み心地がとても軽くなってよかったと喜んで言われた点です。また、このような良い咬合状態は、寝ている時のブラキシズムなどの歯ぎしりが起きても、特定の部分に負担がかかりすぎないために、長期的な安定性が保たれやすい環境であるということです。現在でも10年以上経過していますが、基本的にはメンテナンスのみの定期的な来院をされているだけで済んでおり、他のトラブルはほぼ起きておりません。

最近では、矯正治療も、簡単な症例なら昔から行われてきた歯の表面にブラケットと呼ばれる装置をつけてワイヤーを通して歯を動かす方法だけではなく、透明なアライナー矯正などの方法もあるので、老若男女食事中や周りなど気にせずに人知れず矯正が出来る世の中になってきました。良い時代になったなと思います。

歯科治療は、その選択肢がとても多く、被せ物の素材が単に違うといった単純な問題だけで無い事が実はとても多いのです。


本当は本質的な総合治療が必要でも、保険治療だけの「そこだけ治療」で主訴がとりあえず目先収まったらもうそれで終わりといった例がとても多い現状を残念に思うことがあまりにも多い毎日です。

投稿者: アクアデンタルクリニック

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