院長コラム

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2017.11.01更新

これから数回に渡ってお話させて頂きます。本日はまずは、臨床上我々がよく遭遇する実例からお話させて頂きます。

① 前歯が最近 出っ歯になってきた、開いてきた、ずれてきた感じがする

 出っ歯

 このような症状は30歳以降から訴えてこられる方が多くなります。歯の並んでいる全体的な歯列には生来緩やかなカーブがついているのですが、このカーブのために、それぞれの歯には手前に倒れこんでくる力が噛むたびに加わっていきます。(この力のことをアンテリアコンポーネントフォースと呼んでいます)そのために、どのような人でも歳をとるにつれて、歯の自然の咬耗により手前への歯の倒れこみ現象が多少なりとも起こるのは生理的な現象と言えるのですが、全体のバランスがしっかりと取れていればほとんど問題にはならないのですが、それがあまりにも急速に進んできた場合に大きな問題となります。

 その原因としては、

 1.調和のとれていなければならない歯の噛み合せの面がしっかりと作られてなかったり、前歯   の角度がその人の顎の動きの角度に調和していなかった場合。
 2.噛み合わせの高さの不足や、低すぎるかぶせ物や入れ歯が奥歯に入っている場合。

 3.口腔周囲筋のアンバランスと突出舌癖(舌を歯の後ろ側に強く押し付けるような癖のこと)や、鼻の疾患に伴う慢性的な口呼吸がある場合。

 4.夜間の不適切なブラキシズムやくいしばりなどがある場合。 前回のブログ参照

 5.1~4に加えて、口腔清掃不良による慢性的な歯周病がある場合。

など、複合的な要因がからむことで症状が表面化してきます。

このような場合には、放置しておくと間違いなく前歯がぐらつき始め、近い将来にはその部位から抜歯となることが多いようです。

特に、過去にかぶせ物や入れ歯の治療が一貫性をもってされてきていない場合によく見られます。咬合面を健康保険で作られる歯のように大量生産的に、はしょって作られてしまってる場合だけでなく、残念ながら自費治療でも多く見られるのが現状です 当時治療をうけられた時には違和感がなく、たいていは何年も時間がたってから前歯が開いてくるといった現象として現れるので、その時の歯科治療が原因だったとは夢にも思われない方が多いようです。

 国が大量生産で作られた健康保険の歯の形態でよしと判断している限り、こうした現状が大がかりに健康保険の歯を入れてこられた方の行く末の状態として待ち受けていることになるのかと思うと悲しい限りです。

 その方個人に合った咬合(噛み合わせ)を全体の調和の取れた状態で与えるということは、装着する歯の形態を技工士が時間をかけて注意深く作り上げることと、装着時に我々歯科医師が時間をかけて注意深く調整して、更にその後少し使っていただいてからもう一度確認の調整をしてはじめて完成されるものなのです

健康保険まかせの治療ではご自身の歯の長期的な安全は保証されないのだという事実を再認識することがそろそろ必要になってきたようです。

 

治療法は?

 さて、このようなことから出っ歯になってしまった状態を治す方法ははっきり言って健康保険適用ではありません。

まず現状の顎位(噛み合わせ)の検査から始まります。各種レントゲン及び口腔内・外写真、問診詳細表、体表診査、模型診査を行います。歯の元々の位置が悪い場合には、矯正治療をまずしていただき、歯を所定の位置にもっていきます。その後に既存のかぶせ物を全て撤去して仮の歯を装着して顎位を正常な状態まで調整していきます。歯並びと噛み合わせが安定したところで、その人それぞれの顎の動きに合わせてしっかりとしていて、夜中の歯軋りに耐えられるような咬合面形態が刻み込まれている最終的な歯を仮の歯にかわって置き換えていきます。

 今まで歯軋りというと、それを止めさせるためのいろいろな治療法が試されてきましたが、どれも有効な方法がありませんでした。ところが東京大学大脳生理研究学教室をはじめ様々な機関の最近の研究ではむしろ歯軋りは無意識下でのストレス発散の一つの行為であり、これは止めさせるのではなく、むしろ現代社会においてストレスを全く無くすことは不可能ですので、逆にそういった過酷な状況に耐えられる口腔内の状態を構築されることが必要であることが証明されてきています。 ☛前回のブログ参照       

投稿者: アクアデンタルクリニック